太上洞淵神呪経Scripture of Divine Incantations of the Cavernous Abyss
- 別称
- 洞淵神呪経, 神呪経
- 著者・伝授
- 佚名
- 時代
- 東晋末—南北朝 · 前十巻は東晋末から劉宋(5世紀初頭)にかけて成立したとみられ、後十巻は唐代の増補である。唐末に杜光庭による序がある。
- 道蔵の部類
- 洞玄部本文類
- 収録
- 『正統道蔵』洞玄部本文類
- 分類
- 初期道経
- 巻数
- 二十巻
解題
『太上洞淵神呪経』は東晋末以来の民間道派「洞淵派」の経典であり、終末論的色彩に満ちている。経中では世界の劫運が尽きようとし、疫鬼百万が横行するが、ただ「真君」李弘が世に出て救度するとし、道を奉じて経を誦し「三洞法」を受けた者は疫病と兵乱の難を免れるという。文中には鬼王の名号と神呪が大量に列挙され、道士に呪禁をもって鬼を追い病を治させるもので、方術と救世信仰の色彩が濃厚である。この経は東晋末から劉宋にかけての社会の動揺と疫病の流行のもとでの民衆の宗教心理を反映しており、「李弘」は後漢末以来の道教における救世主の通称で、しばしば挙兵者によって仮託された。全書は前十巻が古朴な文体をもち、後十巻(唐代の増補)には三洞経法と斎儀が混在する。杜光庭は序文でその伝承を説明し整理を加えた。本経は初期道教の終末論・鬼神観・民間道派を研究する上で重要な文献である。
中心思想
- 劫運の末世と真君李弘の出世
- 疫鬼の横行と神呪による駆除
- 道を奉じ経を受けし者は難を免れる
- 民間道派の救世信仰
構成
全二十巻。前十巻は古経、後十巻は唐代の補作である。各巻の多くは「道言」で始まる。
版本
- 『正統道蔵』本
- 敦煌写本残巻
- 『中華道蔵』第30冊
訳本
- クリスティーヌ・モリエ(Christine Mollier)Une apocalypse taoïste du Ve siècle(1990)研究およびフランス語訳
原文とオンライン資料
関連経典
太平経, 元始無量度人上品妙経関連人物
杜光庭参考文献
- Christine Mollier, Une apocalypse taoïste du Ve siècle: Le Livre des incantations divines des grottes abyssales, 1990
- 任继愈主编《道藏提要》
- 小林正美《六朝道教史研究》